思い出ばなし。
以前お仕事を一緒にしようとしていた方で、その方は別業種からの転職で来られた方のようでした。まあ、いろんな人がいたので気にしてなかったのですけど、やっぱり私達は建物や看板、家具、工作物を作るための制作図を描くお仕事だったので、図面での会話が多かったと思います。
それが・・・その方はどうもCADというのは、なにかのパーツをはめ込んで図面が作成されていくものという認識だったようで、みんなが手書きのように線を引き、消し、また直し、出来上がり・・・でも修正入って何十枚もの図面をチェックしながら修正していくという作業をしている姿が理解できなかったようです。
そんで、私よりも年上でこわそうだったんだけど、思いきって「あのぉ~~製図学履修されていましたか?」て聞いたら、「CADのことやね」って言うから、「いえいえ、製図学です。手書きで図面をかけますか?」っていったら、さすがにムッとされて、「手書き図面は今時無いでしょ」って言われたので、一応時期を見て事務所から消えていただきました。まあ、私が代表者の一人だってこともにも気づいてなかったみたいだし、あとで、おまえきっついなぁ~ってみんなに笑われたけど、でもだって、なんだか、CADが勝手に図面を描くとでも思ってるのかなって感じて、私達とはそう長い御縁がない方だって思ったんです。
どうしてそういう方が入所(正しくはアルバイトで来所)されたかって言うと、私達が出張で半年ほど現場に入りっきりでいなかった時に、チーフのお知り合いの方の紹介で手も足りなかったから仕方なくって感じだったそうです。
一応、当時所員じゃなくアルバイトだったみたいで、きつい質問してしまって申し訳なかったなぁ~って、反省しました。いまでも、本当に申し訳ないと思っています。私がいなかったら、その方は正所員になっていたのかもしれないし、ご家族のためにも一生懸命だったと思うから、本当に申し訳なかったです。
でも、少なくとも建物を作るための図面を描くお仕事をしたい方は、正しい製図学(図学)と正しい表現方法を学んでからお仕事をスタートして欲しいです。それから、図面というものがお手紙と同じで、同じ意志を伝えたくても、たくさんの表現が存在して、必ずしも統一された表現方法があるなんて思わないで欲しいです。もちろん、なるべく皆共通の表現というのがあってそれはルールみたいなもんだから、当然その知識がないとダメですよ。
ああ、意外と大切なことで、あまり大切になれないことの一つに、複数の図面を見てもらう時に、何と何がどういう関連付けになっているのか・・・簡単に言うと図面リストの表現があります。図面リストなんだから、図面番号と名前でいいじゃなかってそう思われますよね・・・そう、図面の表紙にはそういうリストを付けます。
でも、職人さんとの打ち合わせの時は、各図面の関係と工程、どの時点でどこをチェックしていくのか、など、わかりやすくした資料をつけることで、分散した職人さんたちも自分たちの関係性がわかるみたいだったし、こちらサイドの監理も楽になります。まあ、わたしがよくぶっ倒れるので、他の方に行っていただく時に、さすがに倒れている私に聞けないものだから、そういうシステムが勝手に出来たのかもしれません。でも、とても便利だったそうで、好評でした。ああ、そういえばいつだったか、そのリスト図に職人さんの個人名の横にそれぞれの性格や癖を書いておいたら、現場では爆笑だったそうです。そんときも確か書き終わったあとに寝込んじゃった・・・自分でも作っていたので、そういう時は図面リストとかはないです。でも、どんなものでも作るときは必ず図面を描くようにしていました。まあ、スケッチオブジェの場合は、図面を作成する前の段階だから、図面は同時進行でしたけど・・・
ってかんじで、図面というものは単なる絵だけじゃないし、その絵を表現するための技術は、やっぱり、学問として学ばないと、作りたいものが表現できなくなってしまいますよって思っています。
ちなみに私は高校・大学時代とその後の学校時代に製図学を勉強しました。大学の時は必須科目だったので履修。それ以外は、表現のいろいろを知りたくって自分で書籍をあさりました。今は懐かしい思い出です。
くれぐれも、学問を学んで複雑なことをするのではなく、あたりまえの誰にでもわかる表現手法を身につけてほしいと思います。
本当に履修できている人は、難しいものをすごくわかりやすく表現してくれていましたので、これから学ばれる方も、きっとそうなると思います。ぜひぜひ、たのしくっていい建物にたずさわれるように頑張ってくださいね。